アキヒトさんは柔らかい笑みを見せたまま。 何かを言おうとしたのかもしれないけど、アキヒトさんの次の言葉を聞く事はできなかった。 ガチャリと扉が開いた。 噂をすれば、だ。 良壱が現れる。 肘掛けに頭を乗せたあたしには、良壱が逆さに見えた。 「…逆立ち…?」 「アホ。帰んぞ。」 良壱はそれだけ言うと、また扉から出ていこうとした。 あたしは飛び起きて、スニーカーを履いて扉に近づく。 あ。とアキヒトさんに 「さよなら。」 と言って、外に出た。