あたしは体を反転させて良壱に近寄り、つかみかかろうとした。

無惨にも腕に力が入らず、良壱の寝るベッドに座った。

傷ひとつないアキヒトさん。

元気だと言って、雨水を宥める海。

アキヒトさんの後ろで、実は笑いを噛み殺している夏弥。

「…みんな、ありがと。」

あたしは本当に幸せだった。

あの日見た死ぬ事を望んだ光。

あれは、死ぬ事じゃなくて生きる事を本当は望んでいたのかもしれない。

「当たり前だろーが。」

隣の良壱が優しい声を出す。

「お前、自分で思ってるより色んな奴に愛されてんだからな。」