痛いとも、止めてとも言わなかった。

「…夏弥もいる。アキヒトも、海も、亜美だって来る…。」

良壱は言い聞かせるように話す。

「俺がいる。」

怖い。

恐怖で、自分が押し潰されそうだ。

二年前、血まみれになった原因はあたしにあって。

羽瑠にもあるから。

『話をつけにいく』とあたしは言った。

このままだと、一生向き合えない気がしたから。

きっと良壱は、それを分かっていたんだと思う。

だから、あたしに主導権を譲ってくれた。