「…なぁ。」 良壱から出たその言葉はあたしに向けられたものではなかったらしい。 「ん?」 夏弥の声が聞こえた。 「聞いてないか?」 主語のない良壱の言葉に夏弥は当たり前のように聞き返す。 「何が。」 「…那瑠。」 あたしの名前が出てきたのは驚きだった。 大袈裟に言うと、心臓が太鼓のバチで叩かれたみたいだった。 …というか。 そこで、あたしの話を出すっていう事は。 あたしは寝ている事になっているらしい…。