「なんで、莉子はあいつん家に行ってるんだよ」

藤城君との電話を終えた勇人さんが、携帯をパタンと閉じた

苛立ちながら鼻から息を噴射するなり、ベッドから出た

床に落ちているシャツを手に乗って、腕を通してから頭を入れている勇人さんの後ろ姿をあたしは布団の中でじっと見つめていた

莉子ちゃん、藤城君が好きなんだね

理由も告げずに、苦しそうに帰った藤城君が気になって、追いかけて行ったんだね!

すごいなあ

莉子ちゃんにはパワーがある

好きな人を一生懸命に追いかける強い心がある


あたしも勇人さんが好き

ずっと一緒にいたいって思う

あたしも勇人さんを追いかける強い心が持てるようになるかな?


「桃香、俺は莉子を迎えに行ってくるから…」

ズボンを履き終わった、勇人さんがあたしに振りかえった

「うん、私は貴美恵さんたちと騒いでるよ」

勇人さんが苦笑した

「酒は飲むなよ」

「飲まないよ」

「桃香、これからは一緒にいような」

「うん」

あたしは勇人さんに頷いた

勇人さんはベッドの中にいるあたしの額にキスをすると、机の上に置いてあるキーケースを手に持って部屋を出て行った