玄関のチャイムを鳴らせば、人が開けてくれる事、とか。 明かりの点いている廊下を歩く、とか。 家族みんなでご飯を食べられること、とか。 香の幸せも、私の羨ましさも、長くはなかった。 その日、珍しく、朝起きたら私のママがいて。 青白いような顔をしていた。 「ママ、熱でもあるの?」 家ではママ、外ではお母さん。 使い分けていた。