「吉村さんって、パシられてんの?」

波崎は急に話の内容を変えた。

吉村(ヨシムラ)というのは菜月のことだ。

「なんで?」

「うちのクラスの女子がなんか言ってたから。そん時に、石月のことも聞いた。」

地獄耳だなぁ…。

「そんな所じゃん?」

否定はしないでおいた。

「そっか。」

波崎は立ち上がる。

「先行くね。じゃ。」

手をひらりと振って行った。

私は動かないでいた。

予鈴が鳴る。

足を動かして、教室に戻った。

“あれから二年経つ”

頭の中で、波崎の言葉が繰り返される。