《Side 天音》


「それじゃ、気合入れていくぞ!」


「「おー!」」


出番15分前ともなると、皆の顔にも多少は緊張の色が見えてくる。

ステージに立つことのない私でも、それは例外ではない。

皆とはまた別の緊張感がある。

気分は、初めて子どもの参観日に出席する母親だ。


「天音は今日も舞台袖に居るの?」


星にそう訊かれ、私は首を振った。


「ううん。今日は客席に居るよ。あの熱気は苦手なんだけど、チケット貰って入ったことだし、今日は客席から皆を見守ることにする」


私がチケットをチラつかせると、星はそれを見て笑った。


「そうなんだぁ。でも、そうなると緊張するかも。だって、初めてじゃない?天音がステージから私達を見るのって」


「あ‥そうかも」


言われて、初めて気が付いた。