「私は宏太郎、…妻の美雪だ」 「杏奈です…私の両親のことはご存じですか…?」 家庭に入るまえに、私は家族に伝えないといけないことがある。 私の母は、私を認めなかった。 「まず、部屋に入りなさい…梧郎、恭介、お前たちも聞く権利はある」 「俺は聞く」 恭介さんは短く言って、部屋に入った。 恐らく、そこが居間なんだろう。 「俺も」 梧郎くんも荷物を玄関におろして、恭介さんに続く。 美雪、と呼ばれた人は不安そうに瞳を揺らして、部屋に入った。