謝罪人 Kyouko

車は農道を走っている。
道を挟んで稲を刈り入れている田んぼが拡がっている。

恭子は、車窓から移りゆく景色を見ながら、仕事のことを考えていた。

謝罪することに対して罪悪感みたいなものがある。
それが仕事への迷いである。

でも、私は謝罪人なんだ。
依頼人がいて、その人のために仕事をしなければいけない。

時として、自分の気持ちに反することがあっても、使命感を持って仕事を終わらせなければいけない。

今は、そのことを一番に優先しなければいけない。
余計なことは考えずに、今日の仕事に集中しよう。
恭子は、自分に言い聞かせた。
 
車はバイバス道路を走っていた。

「あれが市役所です」
突然、中居が車窓の方を指さした。

中居の座っている車窓側を恭子が覗くと、高くそびえ立つビルが見えた。

遠い場所に見えたが、農園ばかりの景色の中で、その建物は目立って見える。