『……リーフ』
窓から顔を出して、こちらを覗き込んでいる。
『どうしたの?』
『ううん。
ただちょっと、眠れなかっただけなの』
『……フィリ、そっちに行ってもいい?』
首を傾げる。
(まぁ別に…)
『いいよ』
部屋から降りてきたリーフは、フィリアの隣に立って月を見上げた。
横を向くと、月明かりに照らされたフィリアの横顔がある。
なんだか、今はフィリアに何でも聞ける気がした。
夜の静かな空気がそうさせるのだろうか、いつもなら結局言い出せない言葉が、口からするりとすべり落ちた。
『――フィリは、ずっとあの森にいたの?』
突然の質問に、フィリアは驚いた様だったが、すぐに淡い笑みを浮かべて答えた。
『そうだよ』
視線は、月にむけたまま。
『両親は?』
『わからない。
覚えて無いの。
気がついたらあの木の下にいて、木や動物達とずっと暮らしてた』
『――何で、フィリアって呼んじゃいけないの?』
初めて、フィリアがリーフの方を向いた。
『それは…』
瞳が揺れている。
『何故?
記憶が無いなら、何て呼ばれてもいいはずなのに』
フィリアの目が、虚空をさまよう。
昔――そう、ずっと昔。
今は思い出せない、彼方の記憶。
『やくそく……
そう、約束したの……。
貴方以外には…呼ばせないって……
でも…あの人が誰なのか、思い出せない……』
大切な人だったはずなのに。
今は遠い、貴方。
『……僕達と来たのは…』
リーフは何となく気づいていた。
フィリアがついて来た理由。
それは、思い出すため。
失ってしまった、大切な人の記憶を。
『リーフを初めて見た時から、なんだかおかしかった。
今まで見たことも無いような場所にいる自分や、あの人が、たまに頭の中に浮かんでは消えていくの。
だから、リーフと一緒に行けば、思い出せる気がしたの。
……ごめんね』
窓から顔を出して、こちらを覗き込んでいる。
『どうしたの?』
『ううん。
ただちょっと、眠れなかっただけなの』
『……フィリ、そっちに行ってもいい?』
首を傾げる。
(まぁ別に…)
『いいよ』
部屋から降りてきたリーフは、フィリアの隣に立って月を見上げた。
横を向くと、月明かりに照らされたフィリアの横顔がある。
なんだか、今はフィリアに何でも聞ける気がした。
夜の静かな空気がそうさせるのだろうか、いつもなら結局言い出せない言葉が、口からするりとすべり落ちた。
『――フィリは、ずっとあの森にいたの?』
突然の質問に、フィリアは驚いた様だったが、すぐに淡い笑みを浮かべて答えた。
『そうだよ』
視線は、月にむけたまま。
『両親は?』
『わからない。
覚えて無いの。
気がついたらあの木の下にいて、木や動物達とずっと暮らしてた』
『――何で、フィリアって呼んじゃいけないの?』
初めて、フィリアがリーフの方を向いた。
『それは…』
瞳が揺れている。
『何故?
記憶が無いなら、何て呼ばれてもいいはずなのに』
フィリアの目が、虚空をさまよう。
昔――そう、ずっと昔。
今は思い出せない、彼方の記憶。
『やくそく……
そう、約束したの……。
貴方以外には…呼ばせないって……
でも…あの人が誰なのか、思い出せない……』
大切な人だったはずなのに。
今は遠い、貴方。
『……僕達と来たのは…』
リーフは何となく気づいていた。
フィリアがついて来た理由。
それは、思い出すため。
失ってしまった、大切な人の記憶を。
『リーフを初めて見た時から、なんだかおかしかった。
今まで見たことも無いような場所にいる自分や、あの人が、たまに頭の中に浮かんでは消えていくの。
だから、リーフと一緒に行けば、思い出せる気がしたの。
……ごめんね』

