君の隣~サッカーボールを追いかけて~

「里穂、ボール1個くれ」


私から数メートル離れたところから、修斗が私を呼ぶ。


「わかった」


修斗に聞こえるよう少し大きな声で返事をして、ボールが入ってるかごから一つ取り出す。


蹴ってみようか?


そんな考えが、頭に浮かんだ。


「行くよ~」


地面にボールを置いて、右足を振り抜いた。


「あれ?」


ボールは地面に、コロコロと転がっただけ。


「なんで~?」


どうして修斗みたいに、ふわってボールが浮かない?


「走って持ってきてくれた方が、早いんだけど?」


修斗が転がったボールを拾いながら、私に厭味ったらしくそう言った。


「いいじゃん。サッカーボールは、蹴るためにあるんだから」