君の隣~サッカーボールを追いかけて~

「そうだけど、今はFCウイングの高木修斗じゃないよ。今ここに居る人は、私の一番大切な人」


そう言って里穂は、幸せそうに微笑んだ。


「そう・・・なんだ」


明らかにガッカリした表情を見せた中山君は、じゃあまた学校でと言ってどこかに行ってしまった。


やべっ、この姫は。


いつも俺の表情を崩す。


「行くぞ、里穂」


赤くなった顔を見せないように、里穂の手を引っ張って歩き出す。


「ちょっ、修斗待ってよ。どこ行くの?」


「いや、特に決めてない」


「えーじゃあね、アイスクリーム屋さん行こ。りんごのアイスがおいしいんだって」


俺が歩き出した方向とは逆に歩いていく。


「アイス、半分こしようね」


まるで向日葵が咲いたような笑顔を、俺に向けてくる。


俺の姫はどうも、俺の顔を赤くするのがお得意のようだ。





・・・END