「いろいろ迷惑かけてすみませんでした」


そう言って丁寧に私たちに頭を下げた桜井君。


「もう気にするなよ。俺はお前が、心からサッカーを楽しんでるのを見れて嬉しかったから」


「はい。母さんのためにも、サッカー頑張ります」


「おう。総体や選手権、ちゃんとチェックしとくからな」


「はい。修斗さんの活躍も、俺楽しみにしてます」


最後に笑顔を見せた桜井君は、それだけ言うと部活に向かった。


さっきまで卒業生でうるさかった校舎が、だんだん静かになっていく。


「みんな、そろそろ帰ったみたいだね」


「そうだな。俺たちも帰るか」


「うん」


最後の下校、いつものように手をつないで歩く。


制服着てこうやって帰ることは、もうないんだよね。


ちょっと寂しいけど、この道はきっと明日に続いてるから。


悲しい卒業じゃない、明るい未来に向かっての卒業なんだ。