君の隣~サッカーボールを追いかけて~

選手がロッカールームに戻って行く。


「里穂~」


「あっ、綾香」


フルートを高く振りながら私に近づいてくる。


「綾香ダメだよ、フルート丁寧に扱わないと」


「ああ、そうだけどさ。サッカー見てたら興奮しちゃって」


へへっと笑って綾香が私の隣に座った。


「でもさ、もうこのフルート吹くことないと思ってたから。嬉しくて」


そう言って、愛おしそうに楽器を見つめた。


綾香は高校卒業したら、家を出て一人暮らしをする。


中学のときに買ったフルートも、家に置いてくって言ってた。


「修斗君にありがとうって言っといて。また楽器吹く場所を作ってくれてって」


「うん」


「それから、吹奏楽部は決勝まで吹く気満々だからって」


そろそろ始まるねって言って、綾香は自分の場所に戻って行った。