守ろうとした相手選手より一歩早く、翼部長がジャンプする。


桜井君の上げたボールは、翼部長の頭をピンポイントでとらえた。


後半39分の出来事だった。


翼部長のヘディングシュートが相手キーパーの左手をかすめ、ゴールに吸い込まれたのは。


うちの学校の応援席からは、悲鳴にも似た歓声が上がった。


吹奏楽の音は、夏の甲子園を思い出させる。


「ロスタイムは?」


優実ちゃんが急いでグランドを見回す。


審判がロスタイム1分の表示をしていた。


「守って!」


相手は時間がないから、急いで攻撃を仕掛けてくる。


ゴール前に上がったボールを、玉木先輩がキャッチ。


「ゆっくりでいいよ」


祈るような思いだった。


玉木先輩が、大きくボールを蹴り出す。