ゆっくりと顔をあげると、すこしまぶしそうに目を細めた『彼』がいた。



「泣くな」



 ――知ってる。

あなたが泣き顔に弱いことも。

あなたがとても寂しがりやなことも。



 そして―……



「探す気、なかっただろ?」


 あなたは愛したら、最後まで愛し続ける人。


意地悪な甘い声は胸の奥まで刺激し、まるで声すらも奪ったかのよう。



「………レ、ン」


 わたしの大好きなレン。





「約束どおり、俺の『恋心』……奪ってみろよ」



 わたしはもう一度始める。

ううん、わたしはとっくに始まっていた。


レンが「泣くな」と寂しげに笑ったあの日から。