「……シイナ…」

 レンの周波数は、囁かれれば、一瞬にして糖度が広がる甘い声へと変わる。

悲しみや寂しささえも、美しく花を咲かせるように。


「新たな人間『レン』との恋を叶えて……」


 レンの体が光り始めた。

思わず抱きついて、ぎゅっと手を背中に回す。



 ぬくもりを忘れないように。

レンへの想いを、ずっと心にとどめておくために。



 レンは応えるように抱きしめ返してくれた。


少しはわたしのキモチを、受け止めてくれたのかな?



 何も言ってくれないけど、生まれ変わったレンに愛してもらえるように。




「お願い、ヴァンパイア様―……っ!!」



 『代償』はわたしの恋心。


 大きな手のひらがわたしの後頭部をなで、そのまま顎へと伝ってきた。

背けていた顔を上に向かされ、真紅の瞳とかち合った。



 そこにはレンの優しいまなざしが、わたしを包む。


「シイナ……」



 最後は光り輝いて、レンが何をいっていたかわからない。

けれど、わたしはいつかその続きを聞かなくちゃ。