あげる、なんてフリマの意味がない。

そしてなによりも、そんな怪しげのものなんか手元においていたら呪われそうだ。



「…い、いいです…っ」

 逃げようとしたのに、一瞬早く彼女の腕が伸びてわたしの手首が掴まれてしまった。

もはや殺されてしまうのではないか、という不安。



 心臓がやけに早く鼓動を打ちつづける中、彼女の口がゆっくり開く。




「遠慮しないで。……これは、恋をしなきゃ意味がないものだから」




 その笑顔は、さっきまで雰囲気を壊すように柔らかかった。

だから安心してしまった……。



 あとから考えれば、おかしいことなのだけど。



 わたし、桐生椎名-キリュウ シイナ-には、叶えたい恋の相手がいたから………








 ……―受け取ってしまったんだ。