【短編】お願い、ヴァンパイア様

「……そんなこと、させない」

「うるさいっ!」


 わたしの言葉は届かないの?

否定し続けるレンに、涙は枯れることなく想いを一緒に零していく。


「方法は、ある」

 小さな呟きに、レンの飲み込んだ息の音がした。


「……『転生』。わたしは、新たな人間『レン』との恋を『望む』わ」

「な、に……言って」


 震えたレンの声。

さらに追い討ちを立てるように、声がした。

「レン」


 わたしじゃない。

わたしの背後にいる……彼女。


「ミーナ……っ?」


 振り返ると、そこには神崎さんが長い髪を揺らして立っていた。

明らかに彼女なのだけれど、雰囲気が一気に変わっていた。


 か弱く揺らす瞳には、それを覆い隠すかのように涙がたまっている。


「神崎、さん……?」

「私はミーナ。……レン、もう気づいて?」


 よろよろと待ち焦がれていたようにレンが神崎さんに近づく。

そんなレンを、わたしは引き止めることができなかった。
 

「貴方をおいていってしまったこと、ごめんなさい。私の想いは、いつだって魔術書と一緒……貴方を愛していた」


「うそだ!」


「……泣いていた私に、困りながら励ましてくれたレン。あなたはもう一人じゃないわ」