「……アナタ、それが気になる?」


 ずっと黙っていた魔女みたいな売主。

わたしはびくんと手が震えて、ひっこんでしまった。


「え、あ……はい…」


 そんなわたしのしどろもどろな返答に、彼女はフフ、と笑うだけ。

ゾクリと背筋が凍ってしまった。


 あまり長居はしたくない。

そう思って曲げていた膝を伸ばして、立ち去ろうとしたんだ。


でも、


「その本はね、恋の叶え方が書いてある魔術書……」


 わたしの心を見透かしたかのような、魅力的な言葉。

思わず、彼女の顔をうかがうようにもう一度しゃがんでしまった。




「恋が……叶うの?」



 半信半疑なわたしに、彼女は妖しく微笑む。

そして、ローブの下からやけに白く細い腕を伸ばし、その魔術書を手に取る。



「神や仏に願うのではない。……これはヴァンパイア様に、よ」


 と、恍惚にも似た瞳で本を愛でる。

サーっと血の気が引きそうになる自分を奮い立たせるのに必死だった。


だから次の突然の彼女の言葉に、ビクンと肩を震わせてしまった。



「…でも、アナタにあげる」