【短編】お願い、ヴァンパイア様

 わたしは思っていたより強くはなっていなかった。


 レンの寂しさが、つないだ手のぬくもりから伝わってくる。

それに耐え切れず涙が溢れる一方。



 白い波がオレンジ色に透けて、寂しさを紛らわすようなその音は鼓膜を撫でるよう。

感情だけに身を任せるには、十分だった。


「ミーナも、そうだったな……」


 ぽつりと消えそうなレンのつぶやき。

すこし笑いをこめたのかもしれないけど、わたしには切なすぎた。


「そうやって自分の関係ないところで泣くくせに、我が強くて…」


 どんな人だったのだろうか。

レンをこんなに熱くさせる人というのは―……。


 ザン、ザンと時折強くなる波音は、わたしの鼓動と重なっていく。



「一緒にいる、って……言ったのに…っ」


 吐き捨てるように俯いてしまった。

握っていた手にも力が入り、今にもレンは涙を零しそうだった。



「わたしが、いる」


 思うより先に、口が動いていた。


 そんな哀しむレンの姿をみていられなかったんだ。

いつも強気で、わたしを惑わすようなレン。


 本当はずっと、寂しかったんでしょう?


そんなわたしの声に、レンはちらりと視線を投げてきた。