元はイイのだから、簡単な服でもそれなりに見えてしまうから恐ろしい。

さっきから通り過ぎる女の子たちが、振り返りこそこそと話しているのに気づいているのかな。


 チラリと隣を見上げれば、汗を光らせながら面倒そうに目を細めているレン。

もったいないほど、本当はカッコいい。


「一体、なんの風の吹き回しだ」

 いきなり紅い瞳をわたしに向けるものだから、思わずドキンと心臓が高鳴る。

慌てて視線を戻すと、一つ深呼吸を置いた。



「……レンのことを知りたいの」


 手が震えた。

ぎゅっと握り締めた拳は汗ばんでいて、でも、そんな緊張感はどこか心地よかった。


「は?」

 すっとんきょうなレンの声に、あたしは取り繕うように回り込む。


「だ、だって!……いきなり代償は『心』とか、レンの命がなくなるとか…急にそんなことを言われても、納得なんて出来ないんだもん!」

「あのなぁ…っ!」

「レンの気持ちは……そりゃ、わからないけど…」

 苛立ったレンを抑えるために、必死にわたしも口を動かした。


 神崎さんは言ってくれた。

わたしが『選択』するのだ、と。


「でもね、レンの命がかかっているならば、わたしはそれをも救いたい」


 方法なんてすぐ見つからないのかもしれない。

けれど動き出さなければ、時は過ぎるだけ。


 もう、待っているだけはイヤなんだ。