体の奥底まで響くようなレンの声。

愛を囁かれたら、身体を預けてしまいそうな。

死を導かれたら、闇へと飛び込んでしまいそうな。



 だけど、その裏に隠れる深い深いレンの哀しみ。


 レンの質問に、あたしはようやく感づいたのだ。


「お前が必要としている『恋の媚薬』………それはヴァンパイアの牙」



 わたしの血を弄んだ、レンの牙。

ゴクリと思わず喉を鳴らしてしまう。



「そして、それは俺の命が終わるとき」


 真剣なまなざしに、己の情けなさを知る。

たくさんの疑問はあるけれど、レンに偽りなど感じられない。


 逃げていたのは、わたしだ。



「お前は、俺の命を捧げるに値するほどの存在なのか?」



 答えられなかった。



 安易に開いた本のページには、どれを選んでもなにかを失う道しかない。

彼か、恋心か………レンの命。



 今更になって、本気で後悔をしはじめていた。