【短編】お願い、ヴァンパイア様

 否定をするレン。

でも、わたしの話を聞いてくれるのは、これが最後かもしれない。


「『代償』が『心』だなんて……そんなの、哀しすぎるよ」


 どうやったら『代償』を払えるのかなんてわからない。

しかし、それを得たレン自身に何か意味を持つのか…。


 シンと静かになった部屋に、レンが震えだす。

大きな手のひらは、ギュッとベッドのシーツを掴んでいた。
 

「……じゃあ、俺はどうなる?」


 弱々しいレンの声。

落としていた視線をもう一度レンに戻す。


 すると、レンは始めて会ったときに、「泣くな」といったあの表情をしていた。


「レ、ン……?」


 聞き返したわたしに、レンは何かを考えるように…そして意を決したようにわたしに向き直った。



「……どうして血を吸われたお前は抵抗もできず、俺の成すがままだと思う?」


 突然の問いに、わたしは答えられないでいた。

まさか聞かれるとは思っていなかったし、それが何を示すのか検討もつかなかったから。


 押し黙って首を横に振る。


「ヴァンパイアの牙には、媚薬効果がある。一時的なものだが、俺たちが吸い終わるには十分な時間だ」


 ………―まさか。