【短編】お願い、ヴァンパイア様

 あれから、再び気を失ったわたし。

気が付いたら自分の部屋にいた。


「あれ、わたし………」


また、レンに血を吸われた。

そのたびにこうして倒れていたんじゃ、体がもたない。


「……わたしの、望み」


 あれが夢でなければ、レンはそういった。


「代償は………恋心、かぁ……」

 翔くんの愛を独り占めできたとして、だけどそこにあたしの想いがなくなったら……それはやっぱり一方通行。

恋が成就したとは、とてもいえない。


「どうしたらいいのぉ〜」

 涙声で布団に顔を埋める。


 いつだって冷静に淡々としていたあの神崎さんでさえ、怒っていた。

わたしは、大変なことをしてしまったことに気づいてしまったんだ。


 不安でじんわりと目頭が熱くなったころ、すぅーっと撫でるように風が吹いた。


「気が付いたか」

 まるで弱音に気付いたように、カーテンの揺れと共にあらわれたのはレン。

暑苦しいほどのローブをなびかせて、ゆっくりと床に舞い降りる。


 長い前髪の間から覗かせる、切れ長の真紅の瞳。

漆黒の毛先は、全てのものを惑わせるように揺れていた。


 その艶やかさに、わたしでさえ狂いそうだ。


「レン、あの……っ」

「さぁ、お前の望みはなんだ?」

 折角勇気を振り絞ったというのに、それさえも気にせずに遮る。