【短編】お願い、ヴァンパイア様

「か、神崎さん…平気?」

 わたしが思わず聞いてしまった。

だけど、それに二人とも反応してきた。


「だめっ!」

 怒声とともにくるりと振り返った神崎さんと、その向こうではニンマリと笑ったレン。


「へえ、カンザキか……。あの霊媒一家は、俺たちにも干渉できるんだな」

 悔しそうに神崎さんは舌打ちをしていた。

どうやら、わたしはなにかしてしまったみたい。


 ……それにしても、今、レンはなんていった?

レイバイ……?



「今すぐ立ち去りなさい!ココは神崎の土地。何人たりとも、侵したのなら許さないっ」


 神崎さんが言い放つと、レンはクスリと笑う。

そして、肩をすくめて両手を挙げた。


「はは、こんなとこでアンタとヤリ合う気はないよ」


 小ばかにしたよう、どこか高飛車とも取れる笑い。

わたしがその言葉に安堵すると、レンは「ただし!」と声を荒げる。



「主は、預かるよ」


 ほんの僅かな時間だった。

ふと、掴んでいた指先を緩めると同時に、わたしの身体はふわり宙に浮いた。


そして気がつけば、レンの腕の中にすっぽりと納まっていた。