【短編】お願い、ヴァンパイア様

 心の中で溢れる疑問を射抜くように、神崎さんは淡々と説明を続ける。


「具体的な内容は、悪魔祓いや当のヴァンパイアでもないから知らない。
しかし、一ついえるのは……そう容易いものではないということ」


 神崎さんが言い終えた瞬間だった。


 パチパチ、と蛍光灯が点滅しだした。

それは何かの予兆とも感じれて、おもわずぎゅっとシーツを握り締めていた。



「…お出ましか」

 そう呟くなり立ち上がると、天井を一身に見つめる神崎さん。


 どういうわけか、晴れていた空に浮かぶ太陽に雲が掛かり始め、辺りはフッと影が落ちたように暗くなる。



 パチパチ、パチパチッ。

まるで火花のような音が止むと、あけていない窓のカーテンが揺れた。


「な、なに……っ?」

 無理やり上半身を起こし、彼女の制服の裾を掴んでいた。

振り払うこともなく、神崎さんはわたしを背にかばってくれた。



「……主よ、お迎えに上がりました」

 いつの間にか現れたのは、今朝あったばかりの……レンだ。


「魔術に失敗しても出るとは、ヴァンパイアも落ちたものだな」


 わたしは戸惑っているのに、神崎さんはそれどころか立ち向かっている。

何かを知ったそぶりなので、しばらく情報収集のため黙っておくことにした。



「主でもないのに、俺がわかるとは……」

 驚いた、というより、上等、といいた気なレンに、神崎さんの表情は更に険しくなる。