夢のような今朝を振り払い、両手を顔の前に合わせる。


「ご、ごめんね?」

 とりあえず謝るわたしにほっと安心したのか、二人はちょっと待っててね、と慌てて保健室を出て行った。

だけど、今のわたしはこうして目を開いているのが精一杯で、体が動かせない。


「一体、どうしちゃったの……?」

 原因とすれば、やはりあのレンのせいなの?


「そうだ」


 わたしの心中での疑問なのに、それに答えたような声が聞こえて、ドキリと図星を指されたかのように驚いてしまった。

その主は、他でもない神崎さんだった。


「神崎さん…っ」

「吸血性鉄欠乏疾患……ヴァンパイアの吸血による症状の一つだ」

 長い髪を揺らしてベッドの横のパイプ椅子に座ると、腕組をしたままわたしを見つめた。


「あの魔術は、ヴァンパイア絡みのものだ」

 詳しくないのだが、と付け加えて、神崎さんは背もたれに体重を預けている。

本当は、彼女の目を見て聞きたいのだけど。


「大方、失敗したのだろう?…今朝その症状ということは、満月ではない昨夜に行ったか……」


 全てを見すかしていた。

ゴメンナサイ、とわたしは肩をすぼめる。



 だって、この恋が早く実るに越したことはない。

翔くんがわたしをみてくれるのならば。