「あはは、今日アレの日で…」

 なんて誤魔化していたけど、二人ともいぶかしげにわたしを見てた。

席に着くと、教壇にちかい神崎さんからの鋭い視線。


 目が合ったと思ったら、すぐに前に戻されてしまった。


 仕方ない、後で聞こう。

ふう、と息を吐いてわたしは珍しく黒板と教科書に向き合っていた。



 時々ひどい貧血に立ちくらみを起こしそうになりながら、そのたびに鉄分のサプリメントを口にしていた。

味なんてわからないけど、こうでもしていないと正気を保っていられそうになかった。


 早く昼休みになって、神崎さんに相談しよう。

わたしの焦りとは反対に時間はゆっくり流れ、いつの間にか、再び意識をなくしていた。



 ぼんやりと見えるのは、どこかの白い天井。

だけど、どこか見覚えがあった。


「あれ……ここ、どこ?」


 呟いた瞬間、シャッと白いカーテンが開いて、我先にと飛び出してきた友人たち。

「椎名、大丈夫!?」

「心配したんだからねぇ~っ!?」

 愛美はうっすら涙を浮かべてる。

そんな顔を見て、申し訳ない気持ちと今朝のレンを思い出していた。



『…泣くな。人間の涙には……弱いんだ』


 ずっと冷たい表情だったのに、その一瞬だけは、儚く哀しい瞳だった。