昨日、魔術書の頁で切ってしまった第一間接。

くっつきかけてきたけど、思い切ってソコを噛んでみた。


「いったぁ〜いっ!」

 ぎゅっと目をつぶって痛みに堪え、じんわりと滲んだ血を十字架に垂らした。

「……お願いします…」

ドキドキ、と緊張と期待がわたしを襲い、すっかり目も冴えてしまった。


 雲もゆっくりと流れ、日差しも温かくなる。


…けれど、それ以上変わらなかった。



「な、なんで……?」


 わたしは愕然とした。

神崎さんに『叶わない』なんていわれながらもやったのに。


 所詮、おまじないはおまじない。

もしかしたら学校へ行ったら変わるのかもしれない。


 そんなプラス思考でもう一度眠ろうとしたんだけど、一つ、気づいた。



 もう青空に消えかかった白い月。

その形は……



「満月じゃ、ない……!」


 わたしは肝心なことに、月の形をすっかり忘れていた。

三日月がおぼろげになる様子は、それはそれはステキで、普段ならぽうっとしていたのかもしれない。


 だけど、妖しい魔術書をせっかく試してみたというのに痛恨のミスをした。

奮った勇気が無駄になったのだ。