遠くでやけに耳障りな音がした。

そして、浅くなった眠りに目をこすって上半身を起こす。


「んー…なんでこんな朝早く目覚ましが鳴るのよ…」

 そうぼやいて、はっと気づく。


 窓際に置いた薔薇。

朝露は小さくついていて、わたしは寝ぼけ眼でスプーンに振り落とした。


そのあと、満月を浮かべる。


「って、朝だし!」

 空に向かってツッコミをいれたときだった。

薄紫いろの天には、まだ沈みきっていない真っ白の月の姿。



「……つ、月だわ!」


 急いで反射させるようにして、スプーンを手にとる。

そして、わたしは目をつぶって祈った。


「……翔くんが、ダイスキなの…」


 ゆっくり瞼を押し上げると、太陽が雲間から日差しをのぞかせてきた。

そしてあたふたと、昔、誰かからもらったクロスのペンダントを取り出して、スプーンに載った朝露を垂らす。


「ええーと、あとは…」


 血を、捧げよ。


 すこし不気味な言い回し。

だけども、わたしの気持ちはそれに臆しない。