【短編】お願い、ヴァンパイア様

 うろ覚えの中。

母が昔結婚式の引き出物でもらったお皿をさがしたけど、結局見つからず、セットであったスプーンを持ってきた。


 学校帰りに花屋で買った薔薇の花。

どうやら夏に咲くらしく、わたしのイメージにはない真っ赤な薔薇を買ってみた。


 しかし、朝露っていうのは、早朝にかけて温度差によって出来るもの。

なのに満月を浮かべるってどういうこと?


 わたしの疑問は誰も解決するわけでもなく、ましてや神崎さんに聞けるわけもない。

とにかくやってみよう、とわたしは意を決して、窓際に置いた花瓶に一輪の薔薇を挿して、目覚ましを5時ごろかけた。



 緊張しすぎて、寝つきは最悪だった。

なによりも、その意味を教えてくれた神崎さんが去り際にもうひとつ付け加えた。



「呪いではない。けれど、似て非なるもの。
あなたの願いは……、叶わない」



 百合と愛美はわかっていないから、ぽかんと口を開けたままだった。

わたしは神崎さんのセリフを覚えるのに必死で、深く考えていなかった。



だから今更になって、不安と期待で胸が痛くなる。



「恋の媚薬、かぁ……」


 それなのに、わたしの願いは叶わないってどういうことなのかしら?


ぐるぐる悩んで、いつの間にかわたしは眠ってしまっていた。






 ピピピピ、ピピピピ・・・・・・