両親や兄弟、
祖父母や親戚、
みんなに愛されて育った。


たくさん恋もしたし、
ある程度悪いアソビも覚えた。


だれがみても、
ごく普通の、
幸せな一人の人間だ。

自負している。



でも私は、
満ち足りた気持ちを知らない。


いつも何か欲している。


それに気付いてしまったのだ。


贅沢なのかもしれない。

・・・贅沢。




「消えたい」





ハルシオンは
あるだけだした。

他の睡眠剤も安定剤も全部だした。

アルコールで
流し込めばいいのだ。

料理酒ならあったはずだ。

そしたら
明日は来ない。

同じこともない。

そう思うと笑えてきた。

簡単なことだ。

なんで今まで思いつかなかったのだろう。




「サヨナラ」





薄れてゆく景色の中で、
漠然とつぶやいた。

また笑えた。








なにもうかばなかった。




走馬灯は、
みんなが見るものではないんだな、
と思った。