綾は、本当にお母さんには何も言わずに帰っていった。
彼氏は同じ職場の先輩で、二十三歳の、水嶋ヒロ似のイケメンなんだとか。
昨日の帰りに立ち寄った喫茶店で、アイスティーをクルクル混ぜながら綾らしくもなく恋愛を語っていた。
どこに惹かれたのかと聞くと、『もちろん顔』と即答。
でも、一番は彼の性格に惚れたらしい。
仕事に集中する彼の横顔は、水嶋ヒロよりカッコイイんだとか。
そして、仕事が終わった瞬間急におちゃらけて職場のムードメーカーになるらしい。
そのギャップにやられたと、くすぐったそうに話していた。
「綾が帰ると急に静になったわね」
相変わらずリビングのソファーに寝転ぶわたしに、短パンとTシャツ姿のお母さんが言った。
わたしはそうだねと素っ気なく答える。
自分の家なのに、なぜか居心地が悪かった。


