全てがキミだった



結局、向日葵の下で夏の虫が涼しげに泣き始め、太陽は月と入れ替わった。


夜空には星が儚げに瞬いていて、ふっと息を吹きかけると輝きが消えてしまいそうだった。
 

全く掃除なんてしなかったけれど、形だけもきれいにしたつもりだ。


夕方から溜め始めた水がようやく上まで溜まってきた。
 

静かだ。


わたし達がプールサイドから下ろす足もとの水だけが、ちゃぷちゃぷと音をたてる。


昼間元気に太陽を見上げていた向日葵も、今では見上げるご主人さまを無くしてしまい、だらんと首をたらしていた。



「静だな」
 

初めに言葉を発したのは公平だった。
 

わたしは、何も言わずにだた頷く。


隣にいる公平に緊張していたから。


夜に公平の顔を見ると、なんだかちょっと変な気分になってしまう。