全てがキミだった

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「はい、これ。
ご褒美」
 

水道で手を洗うわたしに、公平は手を伸ばしてきた。
 

軽く手を握る公平の指の隙間から、何か白いものが見え隠れしている。
 

わたしは素早くスカートのポケットからハンカチを取り出し水を拭き取ると、ゆっくりと公平に手を伸ばした。
 

公平はもう片方の手でわたしの手首を掴み、握っていた何かをしっかりとわたしの手の中に収めた。


「なに、これ」
 

わたしの手の中に収まる、四つに折られた小さな紙。


「だからご褒美」

「ご褒美?なんの?」

「おまえ、この前のテストで成績上がってたんだろ?」

「誰から聞いたの?」

「斎藤」
 

香織め、チクったな。
 

水道の上にある窓から風が吹きこんで来て、公平のサラサラの前髪を揺らした。
 

わたしが切ってあげてから、また伸びてきたみたいだ。