全てがキミだった



「仕事どう?」
 

夕食を済ませ荷物をわたしの部屋に運び、ひと段落したところで、わたしは話しを持ちかけた。


綾が家を出たあとは、今まで綾が使っていた部屋を梓が一人で使うようになった。


「超楽しいよ。
最近は接客に入れるようになったし」

「接客ってどんなこと?」

「うーん、ブローに入ったりシャンプーしたりお茶出したり」

「ふーん」

「亜美は今何してるの?」

「バイト」

「なんの?」

「コンビニ」

「そろそろさ、正社員捜しなよ」
 

綾が、ボストンバックから中身を取り出しながら言う。
 

わたしは、中から出てくるものに目を向けながら、それには答えずにいた。


「あの、箱」
 

ボストンバックの中に手を入れたまま、綾があの箱を顎で指す。


「あんなにグルグル巻きしてんのに、わざわざ見える位置に置くなんて。
亜美も馬鹿だよ。全然忘れようとしてないじゃん」
 

呆れた目をわたしに向けて、また荷物をベットの上に並べ始めた。