桜がすっかり散り、辺り一面が緑に変わる5月になる頃―。

相変わらずTVや雑誌では誠治が取り上げられていた。

敬大は病室のTVを通してそんな誠治の姿を見ていたると、突然病室のドアが勢いよく開いた。

『見つけたで敬大〜』

黒い長髪を靡かせた長身の男が入って来た。

『えっ…まさか…』

敬大はTVに映るその男の姿と、今目の前にいるその男の姿を見比べるように何度も見た。

『はあ?何驚いてんねん敬大。俺やんか、誠治やんか』

そう言って誠治は敬大に歩み寄った。

『は、初めまして…』

敬大は目の前にいる有名人の姿に緊張していた。

『あははは、初めましてって…何の冗談やねん』

誠治は笑って言った。

しかし、そんな誠治とは逆に敬大は戸惑っていた。

そんな敬大を見た誠治は真面目な顔した。

『敬大が記憶喪失になったって聞いてたけど…ホンマやってんな』

誠治は少し寂しそうな表情を見せた。