『でもあたしもそうだし、蓮君だって、友也君だってきっと敬大に支えられた事がたくさんあるよ。敬大って結構頼りにされてるんだから』

楓は笑顔で言った。

『ありがとうございます。そう言って貰えると素直に嬉しいです』

敬大は少し照れ臭そうだった。

『あっ、そろそろバイトの時間だ。あたしもう行くね。コレあたしの携帯番号…。敬大の携帯は事故に合った時に壊れてしまったみたいだから、とりあえず何かあったら公衆電話から電話して』

楓はそう言って、机の上に自分の携帯番号を書いたメモ用紙を置いた。

『わかりました。月姫さん、バイト頑張って下さい』

敬大は楓を笑顔で見送った。

『うん』

楓は笑顔で頷き、病室を去って行った。

楓が病室を去った後、敬大はまた窓の外を見つめた。

『何なんだろうな…何か月姫さんと一緒にいると凄く落ち着くんだよな…。きっと幼なじみだったせいだよな!?』

敬大は、窓から見える楓の帰る姿をじっと見つめ続けていた。

事故にあって1年近く…

そんな記憶を失くした敬大でも、心の記憶だけは覚えていたのだった。