『もうこのままずっと植物状態のまま生きる事になるかも知れないってさ…。赤信号で飛び出すなんて…何やってんだよな敬大のやつ…そうまでして渡りたいくらいの何かがあったのかな…』

そう言って、蓮は唇を噛み締めた。

蓮のその話を聞いた楓は敬大の名前を呼びながら、敬大の身体を強く揺すった。

『敬大!!目を開けてよ…敬大!!ねぇ、敬大ってば!!』

楓の目には涙が浮かんでいた。

『楓…』

蓮は敬大を揺する楓を止め、首を横に振った。

『蓮君…』

楓は涙を流し蓮の胸で泣き濡れた。

自分の思いにやっと素直になって…

自分の愛のかたちをやっと伝えようとしたのに…。

敬大の愛のかたちを知る人はライブ会場にいた人たちだけで、敬大が1番伝えたかった大切な人…楓には結局伝えられないままだった。

ベッドで静かに眠る敬大と、そのそばで泣き濡れる楓…

事故に合って折れてしまった敬大のギターのように…二人の思いも繋がる事はなく折れてしまったのだった。