蓮は1番奥の病室の前で足を止めた。

『蓮君…?』

楓も足を止めた。

蓮は楓の方を振り返った。

『ここ…』

蓮は一言そう呟き、病室のドアをそっと開いた。

楓は不安を胸に、恐る恐る病室に足を踏み入れた。

病室の窓が開いているため、そこから入って来る風がカーテンを静かに揺らしていた。

『敬…大…?』

楓の目線の先には、頭に白い包帯を巻き静かにベッドで眠る敬大の姿があった。

『敬大!!』

楓は涙を浮かべながら静かに眠る敬大に駆け寄った。

『敬大!!敬大!!』

楓はひたすら敬大の名前を呼んで起こそうとした。

しかし敬大は何も反応を示さなかった。

『敬大!?』

楓は様子がおかしい敬大に気付いた。

『眠っているんだ。赤信号で飛び出して…トラックにひかれたんだって。頭以外は不思議な事にどこもたいしたケガはしていないけど、打ち所が悪かったみたい』

蓮は敬大の顔を見つめながら言った。