高校を出た二人はようやく楓の結婚祝いに食事をした。

もう既に日は沈み、夜空ではたくさんの星が煌めき、お月様が顔を覗かせていた。

食事を終えた二人はレストランを出て、帰路につこうと夜道を歩いていた。

『ねぇ、敬大。もう最後に1件寄りたい所があるんだけど…良い?』

楓は隣を歩く敬大にそっと告げた。

『えっ?まだ行きたい所があるのか?』

『うん。これが最後のわがままだから付き合ってよ』

楓はそう言いって敬大の手を引っ張ってさっさと歩いた。

メモリーツリー…

二人がやってきた場所は二人だけの思い出のあの場所だった。

森林公園の中央に咲く大きな一本の枝垂れ桜。

二人はその枝垂れ桜の木の下に静かに腰を下ろした。

『3回目でやっと桜が咲いている時にこの場所にこれたね』

楓は枝垂れ桜を見上げて言った。

『本当だな』

敬大も枝垂れ桜を見上げた。