『この神社も昔はよく来たよなー』

敬大は神社の石の階段を上がり、鳥居を越えた所で足を止めた。

敬大の目の前には楓の姿があった。

『か、楓の奴…何してるんだ?』

敬大は楓の姿に気付き、何故か近くの建物の陰に身を潜めた。

楓は一人手を合わせてお参りをしていた。

そんな楓の傍に年老いた神主さんがやってきた。

『また今日も来てたんだね、楓ちゃん』

神主さんは楓に声をかけた。

『あ、神主さん。うん、願いが叶うまでずっと続けるつもりだから…』

楓はそう言って、目を閉じ神様の元に願いを飛ばした。

『いつだったかな…あれはクリスマスの日だったね。外はまだ暗く、冷たい雪の舞う中突然神社にやってきて涙流しながら必死に願い事をしてたね。あの日からずっと毎日、よほど叶えたい願いなんだね』

神主さんはそう言って優しくニコッと笑いかけた。