『心臓が弱い癖に、無理なんかすんなよ』

その声を聞いた楓は顔を上げた。

『えっ…敬大!!』

楓は驚いた。

『ほらよ』

敬大はそう言って、しゃがみ込む楓に右手をスッと差し延べた。

『あ、ありがとう…』

楓は敬大の手を掴み立ち上がった。

『少しは落ち着いたか?』

『えっ…うん…』

楓はうなづいた。

『そうか…。じゃあな』

敬大はそう言って、ゆっくりと歩き出した。

『け、敬大!!』

そんな敬大を楓は呼び止めた。

敬大は背を向けたまま足を止めた。

『あの…えーっと…あ、ありがとう!!』

楓は何か言いたそうだったが…結局お礼だけを言った。

楓のその言葉を聞いた敬大は、背を向けたまま楓に手をふり立ち去った。

アパートへの道を歩いてると敬大の携帯が鳴り響いた。

『はい…』

敬大は携帯に出た。

『何だ…蓮か…』

電話の相手は蓮だった。