敬大は自分の本当の気持ちが少しだけ分かった気がした。

『敬大、あたし別れてあげるけど…そのかわり一つだけ約束して。もし、もし今度生まれ変わってもう一度出会えたなら…出会えたならその時は、楓ちゃんじゃなくてあたしを選んでね』

レミは涙を流しながら笑顔で言った。

『さよなら、敬大』

『ちょ、ちょっと待ってレ…』

敬大が呼び止めようとした瞬間、公衆電話のお金が全て落ち、電話が切れた。

『小銭全部なくなっちゃった…』

レミはそっと受話器を戻した。

そしてレミは雪が降り積もる電話ボックスの中で崩れ落ちて涙を流した。

息で白く曇った電話BOXのガラスにレミが指で書いた相合い傘。

そこには敬大とレミの名前が書かれていた。

そして、二人の恋の終わりと同時に、ガラスをつたう結露が涙のように流れ落ちて、相合い傘が消されて行った。

レミは、敬大が好きだからこそ好きな人の1番の幸せを願ったのだった。

一晩中、白い涙が降り続いた。