『敬大おめでとう』

控室でギターを片付けている敬大に、誠治が声をかけた。

『あ、誠治さん…ありがとうございます』

敬大はそう言って軽く会釈を交わした。

『お前はやっぱり俺の1番のライバルやったわ』

誠治は笑顔で言った。

『なあ、敬大…俺さ、敬大の歌を聴いてやっと気付く事が出来たわ。自分の歌に足りないもんが…』

『えっ?本当ですか?』

敬大は驚いた。

『ああ、敬大の歌にあって俺の歌にないもん…それはな“心”や』

『心!?』

敬大は聞き返した。

『なんちゅーかな…相手に伝えようとする心が、敬大の歌にはぎょーさん詰まってた。俺の歌はいつも自分勝手に楽しんでる、そんな歌やって事がわかったんや。自分が満足するだけの歌じゃ、聴いてる人は満足させられへんからな』

『誠治さん…』

『敬大の歌を聴いてな、胸の奧がなんや暖かくなってな、いつまでも聴いてたいって思ったんや』

誠治は笑顔で言った。