『だって…本当に嬉しいんだもん』

敬大の事を1番分かっていた楓にとって、敬大のこの一歩が何よりも嬉しかった。

『あー、でも俺ちゃんとやれっかな。ちゃんとコンテストで歌えるかな』

『大丈夫だよ。敬大ならきっと大丈夫だよ』

楓はそう言ってニコッと笑った。

『何で大丈夫だって楓にわかるんだよ?』

敬大は少しふてぶてしく言った。

『あたしは敬大を信じてるからさ』

『楓…』

敬大はそう言って、楓を見つめた。

楓は優しく微笑んだままだった。

そして敬大はコンテストに参加して楽しそうに歌っている自分を想像しながら、また川を見つめた。

楓も敬大の隣から静かに川を見つめた。

『あ、なあ、楓の報告ってそう言えば何?』

敬大は思い立ったかのように楓に尋ねた。

『あ、えっーとね…えーっとその…あ、就職の内定貰ったんだ』

楓は何かをごまかすかのように言った。