『や、やべー…目が霞んで来た…』

敬大は出血の量によって、意識を無くしそうになっていた。

『祥乃さん…見つけた…』

ナイフを持った男が二人を発見し、ナイフ片手に走って来た。

そして男は祥乃目掛けてナイフを振りかぶった。

祥乃がもうダメかと思い目を閉じた瞬間、男の悲鳴が聞こえた。

祥乃が恐る恐る目を開けると、そこには男が地面に倒れ込んでいた。

そして男が持っていたナイフが地面に転がっていて、そのナイフを黒いハットを被った男が拾いあげた。

『お、お兄ちゃん!!』

『祥乃、無事で良かった』

祥乃の兄、リョータは祥乃に優しく微笑んだ。

リョータは地面に倒れ込んでいる男に歩みより怒鳴った。

『俺の妹に手を出すな!!』

リョータは男を睨みつけた。

男は悲鳴をあげ形相を変え、逃げて行った。

『お兄ちゃん!!敬大君が…』

祥乃はリョータを呼んだ。

リョータは敬大に歩み寄った。

『おいっ!!しっかりしろ!!』

リョータは倒れている敬大の体を揺すった。

『黒い…ハット…。あの時の…俺に夢をくれた…あの時のギタリスト…ありがとう…』

目が霞み、意識が薄れゆく中で敬大はボソッと呟き、そして意識を無くした。

その後敬大はリョータが呼んだ救急車に乗せられ、桐丘総合病院に運ばれて行った。

そんな夏の蒸し暑い最後の夜だった。