『うっ…く…』

敬大は脇腹を抑え、しゃがみ込んだ。

敬大の脇腹からは血が溢れ出していた。

『祥乃さん…』

ナイフを持った男はまた祥乃に歩み寄った。

『こ、来ないで!!』

祥乃は泣き叫んだ。

『は、離れろ!!』

敬大は脇腹を抑えながら、男をおもいっきり蹴り飛ばした。

男は工事現場の柵に激突した。

敬大は恐怖のあまり足がすくんでいる祥乃の手を引き、祥乃を連れてその男から逃げた。

『祥乃さん…』

男はナイフを握りしめ、地面に落ちている敬大の血の跡を辿って追いかけた。

『はぁ…はぁ…』

敬大は工事現場を出てすぐの橋の上で、崩れ落ちてしまった。

『祥乃…早く逃げろ…』

敬大は四つん這いになり、大量の汗と値を流しながらしんどそうだった。

『こんな状態の敬大君置いてける訳ないでしょ!!』

祥乃は涙を零しながら、敬大を心配していた。